ハイパースペクトルカメラとは?
ハイパースペクトルカメラとは、1回の撮影で多くの波長(例えば100波長分など)ごとの画像を撮影できるカメラとなります。
多くの波長の画像を取得できると何がいいか?というと、撮影する被写体によって、特定の波長で暗くみえたりするのですが、この特定波長というのが、材料や状態(水分を多く含むなど)によって異なるため、材料の分類やキズの検出が可能になります。
具体的には食品の中に含まれる異物の検出や、農作物の打痕、リサイクル材料の分類など、一般的なカメラで撮影した画像だけでは困難な検査も可能になります。
ただ、実際には複数の分類が必要でない場合には、検査したい被写体がどのような波長特性を持つのか?を解析的に撮影し、実際の検査では、特徴的な波長だけで撮影するようにバンドパスフィルタを使って、一般的なカメラで撮影する場合もあります。
ハイパースペクトルカメラで撮影した画像
下の写真は、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル、生米、ナイロンを一般的なカラーカメラで撮影した画像になりますが、この画像を通常の画像処理で分類しようとすると、ほぼ白いか、透明なので、これを分類するのは、意外と難しかったりもします。
この被写体を実際にハイパースペクトルカメラで撮影し、各波長ごとの画像を並べた物が以下の動画になります。
ここでの注目ポイントとしては波長を大きくしていくと、特定の波長で暗くなり、さらに波長を大きくすると、元の明るさに戻ったりしています。
この特定の波長というのが、材質により異なっています。
上の動画で、各材料ごとの輝度変化を横軸に波長、縦軸に輝度値をプロットした物が以下のグラフになります。
このグラフを見ると、例えばポリスチレンの1150nm付近が輝度値が落ち込んでいるのは、他の材料と比べて特徴的です。
他にもポリプロピレンでは1540nm付近で明るくなっています。
さらに、各波長のピンポイントで見るのではなく、波長による輝度変化全体を捉えると、グラフの線の形状が材質により異なるので、材質の分類が可能になります。
実際の撮影風景と、分類の処理を行った様子がこちら↓
ハイパースペクトルカメラの原理、仕組み
一般的なカメラでも、エリアセンサ、ラインセンサがあるように、ハイパースペクトルカメラでも、エリアセンサのように撮影するタイプや、ラインセンサのように被写体を動かして撮影する必要のあるラインスキャン方式があり、さらに、光を分光する回折格子にも、反射型や透過型があるのですが、ここでは、ラインスキャン方式で、透過の回折格子を使うハイパースペクトルカメラの仕組みを紹介します。
まず最初に一般的なラインセンサカメラでは、どのように撮影しているかというと、被写体の像をレンズを介してラインセンサ上に結像させます。
この状態で、被写体を移動しながら連続的に撮影することで被写体全体の画像を取得しています。
では、ハイパースペクトルカメラでは、どのように撮影しているか?というと、上図のラインセンサの位置にエアスリット(細長い穴が開いたもの)を配置し、スリットを通り抜けた光をレンズで平行光にします。
その平行光を回折格子(グレーティング)に斜めに入射するように配置すると、回折格子から出た光は波長ごとに異なる角度で回折します。
この回折した光をレンズを介してエリアセンサ上に結像させます。
すると、エリアセンサ上では、縦方向に同じ位置の波長の異なる光の成分が結像した状態になります。
この状態で、通常のラインセンサと同じように、被写体を移動しながら撮影し、横1ラインごと(波長の異なるラインごと)に画像を並び替えると、1回のスキャンで複数波長で撮影した画像を同時に得ることができます。
実際の撮影に関して
ハイパースペクトルカメラを用いると、被写体の材質や状態によって、特定波長において特徴的な変化をする場合があると言いましたが、実際に撮影したい被写体において、そのような変化をするものか?というのは、実際に撮影してみないと分からない部分が多くあります。
具体的に撮影ワークを検討している方は、私の会社の営業までお問い合わせください。
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