焦点深度、被写界深度とは何か?絞りとの関係

焦点深度、被写界深度などの各名称の位置については、下図は参照ください。

 

 

上図の物体面(左側)が被写体側で、像面(右側)がカメラのセンサ側です。

 

許容錯乱円

物体面上の点を撮影したときに、像面上では点として結像し、像面から前後に外れると
円として結像します。
この円のことを錯乱円といい、ピントが合っているとみなされる最大の円を許容錯乱円といいます。
マシンビジョンでCCDカメラを用いる場合、許容錯乱円にCCD画素の大きさが用いられる場合が
多いようです。

被写界深度

物体面(被写体側)において、ピントが合って見える範囲のことを被写界深度といいます。

焦点深度

ピントが合って見える範囲において、像面側(CCDなど)の結像範囲を焦点深度といいます。
被写界深度と混同する人が多いのでご注意下さい。
通常、被写体の撮影で大事な深度は被写界深度となります。

絞りと被写界深度との関係

レンズの絞りは 明るさを調整するもの という役目もありますが、被写界深度を調整するものという大事な役割があります。

例えば、人物の撮影などでは、人物の背景をボカして撮影するには、レンズの絞りを開いて撮影します。
背景がボケるということは、被写界深度が浅い事を意味しています。

しかしながらカメラを使った画像検査をする場合、被写界深度が深い方が理想的です。

被写界深度を深くするには絞りを小さく閉じると被写界深度は深くなります。
しかしながら、そうすると画像が暗くなります。

画像が暗くなるので、画像を明るくするには

  • 照明を明るくする
  • 露光時間を長くする
  • ゲインを上げる

のいづれかの対応が必要となります。
しかしながら、それとは逆に、

  • 照明は安い物を使いたい → すごく明るい照明は高い
  • 高速に撮影したい → 露光時間は短くしないと高速に撮影できない
  • ノイズは少なくしたい → ゲインを上げるとノイズが増える

と、相反する要求もあります。

そのため総合的にカメラの撮影システムを捉え、絞りを調整する必要があります。

撮影する画像の明るさを一定にしようとすると、一般的に以下のような関係になります。

絞り 大(開) 小(閉)
深度 浅い 深い
ゲイン
ノイズ 少ない

これらの関係がどのように画像へ影響を及ぼすか?をシュミレーションできるサイトがありますので、いろいろお試し下さい。

http://camerasim.com/camera-simulator.html

上記の設定値はカメラ用語なので、用語を置き換えるなら、
Lighting(照明の明るさ)、Disatance(撮影距離、ワーキングディスタンス)、Focal Length(焦点距離)
ISO(ゲイン)、Aperture(絞り)、Shutter Speed(露光時間)
という感じでしょうか。

 

 

ただし、この計算は収差のない理想的なレンズの場合の話で、実際には像面湾曲の影響により、
像を結ぶ位置が平面からズレてしまいます。

 

このズレ量がレンズメーカに聞いてもあまり教えてくれないので、結局は全視野において
像がボケることなく撮影できるか?は撮影してみないと分からない場合がほとんどです。

 

被写界深度の計算

<計算例>
画像数2353×1728mm、画素サイズ7.4×7.4μmのカメラを用い、
レンズの焦点距離が55mmのレンズを用い、物体距離(≒ワーキングディスタンス)
300mmで撮影を行いたい場合の被写界深度の計算

 

設定条件より
許容錯乱円 =7.4μm
F=2.8の場合

 

この計算はレンズ選定(視野、撮影距離など)のページで出来るようになりました。

レンズ選定上の注意

  • 各レンズには被写体にレンズを一番近づけることの出来る距離(最短撮影距離)が設定されています。
    撮影距離Dが最短撮影距離を下回らないようにレンズを選定して下さい。
  • レンズの許容カメラフォーマットもしくはイメージサークルがCCDのサイズ以上となるレンズを選定してください。
  • レンズの公式の計算は薄肉レンズモデルの計算です。計算結果には誤差が含まれます。

 

 

余談ですが...
35mmフィルムは35mmって言っているのに、なんで36mm???と思ったりもしますが、
35mmなのはフィルムの幅で撮影領域は36mm×24mmとなります。

 

 

レンズ選定(焦点距離、WD、被写界深度の計算)

下図のような、レンズの焦点距離 f やワーキングディスタンスの求め方を紹介します。

レンズの計算には、下図のような薄肉レンズモデルを用いて計算します。

計算に必要なのは、レンズの公式と倍率の計算式です。

レンズの公式 倍率

下記、表中に数値を入力し×××計算ボタンをクリックすると、それぞれの値を計算することが出来ます。

以下、物体距離 ≒ ワーキングディスタンスとして計算します。
また、下記計算中の『センサ幅 ℓ (mm)』の値はセンサの物理的な大きさを指定するのではなく、実際の撮影に使用するセンサの領域を指定します。
例)CCD素子サイズが7μmのセンサで5000画素使用する場合、センサ幅 ℓ (mm)は
7μm × 5000画素 = 35mm
とします。

ただし、ラインセンサでラインセンサの専用レンズでなく、一眼レフカメラ用のFマウント、Kマウントレンズを用いる場合は、経験的に、ここで説明している計算でレンズを選定するよりも、マクロのf=55mmぐらいのレンズを用い、ワーキングディスタンスで視野を調整した方がきれいな画像が撮影できると思います。

 

焦点距離 f を求める場合

レンズの公式、倍率の式を変形して、

として焦点距離を求めます。

センサ幅 ℓ (mm)
視野幅 L(mm)
ワーキングディスタンス a(mm)
焦点距離 f(mm)

ワーキングディスタンス a を求める場合

レンズの公式、倍率の式を変形して、

としてワーキングディスタンスを求めます。

センサ幅 ℓ (mm)
視野幅 L(mm)
焦点距離 f(mm)
ワーキングディスタンス a(mm)

被写界深度を求める場合

被写界深度は下図のように求めます。

として被写界深度を求めます。
CCDカメラの場合、許容錯乱円 ≒ CCDの画素サイズと して計算します。

ワーキングディスタンス a(mm)
許容錯乱円 ε(μm)
F値
焦点距離 f(mm)
前側被写界深度(mm)
後側被写界深度(mm)
被写界深度(mm)


※本計算は薄肉レンズモデルの計算です。計算値には誤差が含まれます。
計算結果は参考程度に参照して下さい。

 

備考

レンズ選定の式にはここに記載してある式とは別に

という図の場合、

の関係式から、焦点距離は

として求める!

というような説明も多いかと思います。 むしろ、こちらの方が多い?!

なぜか、カメラレンズメーカーのレンズ選定の式ではこちらの式を用いる場合が多く、
ガラスレンズメーカーは最初に紹介したレンズの公式を用いて紹介している場合が多いようです。
試しに両方計算してみると分かりますが、計算結果はさほど変わりません。
おそらく、薄肉レンズモデル計算の誤差範囲???

ということから、レンズの選定の場合には計算の簡単な、こちらの式を用いるのかもしれませんが、
どうにも、焦点距離fの示している距離が気持ち悪くて、最初に説明しているレンズの公式を用いた
説明としました。
本来、焦点距離fは無限遠からの光(平行光)が入射した時に、レンズの主点から光が1点に集まる場所までの
距離を現します。
ワーキングディスタンスもレンズ本体(筐体)の先端からの距離ですが…
この辺の名称の詳細はレンズ周りの名称のページを参照願います。

 

レンズ周りの名称

レンズの選定に知っておきたい名称についてまとめました。

 

 

ワーキングディスタンス(WD)

物体面からレンズの先端までの距離

フランジバック(FB)

レンズの取付面(フランジ)から像面までの距離
(代表値)
Fマウント:46.5mm(ニコン用レンズ)
Kマウント:45.46mm(ペンタックス用レンズ)
Cマウント:17.53mm

イメージサークル

像面に結像できる範囲(撮影可能な範囲)を径(Φ)で表します。
レンズを選定するときに、CCDの領域に外接する円の大きさ以上のイメージサークルを持ったレンズを選ぶ必要があります。

画角

画面上に鮮鋭な画像として写し込むことができる範囲を角度で表したもの。
イメージサークルが大きいか焦点距離が短いと画角は大きくなります。

前側焦点、後側焦点

平行な光束を入射したときに収束する点

前側主点、後側主点

焦点からレンズ側に向かって焦点距離 f だけ離れた位置
この位置はレンズによって異なりますが、一般的に主点の位置は公開されていません。

撮影距離

物体面から像面までの距離
とくにレンズを用いたときに最短で撮影できる距離のことを最短撮影距離といいます。