【Excel】フーリエ変換

エクセルでフーリエ変換をするには、Webで検索するとほとんどの場合、分析ツールのフーリエ解析で行う方法が紹介されているかと思います。

この方法は以下のページを参照ください。

【Excel】フーリエ解析(FFT)

 

しかしながら、分析ツールで行うフーリエ解析では、解析対象のデータを変更しても、自動で結果を再計算しれくれない上に、Excelのフーリエ解析はFFTであるため、データ個数が2のn乗個(2,4,8,16,32,64,128・・・)という制限があります。

 

そのため、エクセルのセルの関数のみを使い、フーリエ変換(離散フーリエ変換[DFT])を行う方法を紹介します。

ただし、結論からすると処理が重いため、データ個数が多い場合はExcelのフーリエ解析(FFT)を使った方が良さそうです。

ここでは、フーリエ変換のお勉強用に使って頂ければ幸いです。

 

エクセルでフーリエ変換を行ったファイルはこちら↓

discrete_fourier_transform_rev1.zip

 

エクセルのイメージはこちら↓

 

データf(x)と書かれた下の黄色いセルの部分にデータを入力すると、フーリエ変換され、振幅スペクトルと位相が計算されます。

 

エクセルの分析ツールで行うフーリエ解析では以下の式を用いていますが、

 

ここでは、フーリエ変換の結果の値に意味合いを持つ下記の式を用いています。

 

 

離散フーリエ変換についてはこちらのページでも紹介していますが、エクセルでフーリエ変換を行うために必要な情報をまとめておきます。

 

まず、フーリエ変換を行うと、各周波数ごとに複素数の成分として変換されます。

 

複素数zは実数成分をa、虚数成分をb、実数Aとすると

      z = a + bi = Ae

 

のように表示され、図示すると下図のようになります。

 

  a = A x Cos θ

  b = A x Sin θ

 

複素数の絶対値は

 

位相(複素数では偏角といいますが)は

 

となります。

このへんの感覚は、ベクトルの成分が(a, b)、ベクトルの長さがA、傾きがθの場合と同じなので、覚えやすいかと思います。

 

 

 エクセルで用いる複素数の関数

エクセルで複素数の計算に用いる関数は関数名の先頭にIMが付く関数を用いますが、今回用いた関数を紹介します。

 

■複素数 COMPLEX関数

実部をa、虚部をbとする複素数は  COMPLEX(a, b)

 

■複素数の絶対値 IMABS関数

複素数(a + bi)の絶対値 IMABS(“a + bi”)

結果は√(a2 + b2) となります。

 

■複素数の実部の取得 IMREAL関数

複素数(a + bi)の実部は  IMREAL(“a + bi”) = a

 

■複素数の虚部の取得 IMAGINARY関数

複素数(a + bi)の虚部は  IMAGINARY(“a + bi”) = b

 

■複素数の偏角の取得 IMARGUMENT関数

複素数(a + bi)の偏角は  IMARGUMENT(“a + bi”)  で-π~πの範囲でラジアン単位で取得

 

■複素数のべき乗 IMEXP関数

zが複素数のべき乗は IMEXP(z)

(例)ei π/3 を計算するには

IMEXP(COMPLEX(0, PI() / 3))

= 0.866 + 0.5i

となります。

 

■複素数の足し算(合計を含む) IMSUM関数

複素数xと複素数yの足し算(片方が実数の場合も含む)は IMSUM(x, y)

(例)

セルA1の複素数とセルA2の足し算は IMSUM(A1, A2)

実数の合計の関数(SUM関数)と同様にセルA1~A10を合計するには IMSUM(A1:A10)となります。

 

■複素数の掛け算 IMPRODUCT関数

複素数xと複素数yの掛け算(片方が実数の場合も含む)は IMPRODUCT(x, y)

 

■複素数の割り算 IMDIV関数

複素数xと複素数yの掛け算(片方が実数の場合も含む)は IMDIV(x, y)

 

 

フーリエ変換の意味合いを読み解く

今回、フーリエ変換の式に

の式を用いたのには、フーリエ変換後の値に意味合いを持つため、あえてこの式を用いました。

 

今回、用いたデータはこちらのページ(http://www.data.jma.go.jp/gmd/risk/obsdl/)より2015年と2016年の東京の2年分(731日分)のデータを用いました。

 

2年分の気温データのため、731個のデータの周波数は2になることを期待しています。

 

そこで、あらためてエクセルのシートを眺めてみると、振幅ペクトルは周波数tが0の時の次に最大になるのはt=2の時で周波数2の成分が大きい事がわかります。

 

このことは、731 / 2 = 365.5日 が1周期分のデータ個数となります。

 

t=0 の時の振幅ペクトルの値(16.4625171)は全体の値の平均値を示しています。

 

t=2 の時の振幅スペクトルの値(5.12963)の2倍の値(10.25926)が周波数が2の時の振幅を示しています。

※実際にはt=2と複素共役と呼ばれる虚数成分がt=2のときの負になるt=729の時の2つの波形を足し合わせることで、虚数成分が打ち消しあい、実数部分の振幅が2倍となります。

 

つまり、今回の2年間の気温データは 平均16.4625171 ± 10.25926 ℃ の傾向で気温変化した事がわかります。

 

t=2 の時の位相(155.3578°)の負の値(-155.3578°)の位置にピークの位置が来ることを意味しています。

 

ここまでわかると、2年間の気温データの変化の主な成分はCOS波形で表現する事ができ

 

16.4625171 + 10.25926 × Cos(x / 365.5 × 360° +155.3578°)

 

となります。

この式を気温データに重ね合わせると↓

 

 

見事、気温変化の傾向がつかめました!!

 

(追記)

フーリエ変換のマクロ処理版のページも作成しました。

合わせてご参照頂けたら幸いです。

【Excel】高速フーリエ変換(FFT)のマクロ(VBA)

 

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